末っ子が本免を受けるために帰ってきた。
本免は住民票のあるところで受けるらしい。
来年4年生、インターシップという就活を始めるためにメッシュの入った髪の毛は、真っ黒で短髪に刈り上げられている。
なんか、コロナ禍で業績の厳しい会社が多いせいか、インターシップの申し込みも、大企業は書類審査で速攻 蹴落とされるらしい。
なかなか大変。
2番め、3番目の子の時代が、たまたま売り手市場だっただけで、そろそろ就職難の時代がやってくるだろうと思っていたけど、奨学金も返済しないといけないから、なんとか頑張ってもらいたい。
この子も結婚願望が
「ないね」
友達の両親の夫婦仲が悪い人が多いらしくて、
「そんなん見てたら結婚なんかしなくていいかなあって、一人で気楽に暮らしたいよ」
娘についで、息子も結婚願望なし とか・・・少しショックだ。
仲の悪い夫婦は友達の夫婦であって、うちじゃないだろう と思ったが、娘から私がモラハラ夫のことを相談したことをこの子は聞いたのかも知れない。
少し前までは、「料理上手な子がいいかなあ♪」
なんて嬉しそうに言っていたのに・・・。
「似たくないと思ってるのに、やっぱりお父さんに似てきたと思うしね、結婚向きじゃないよ」
鏡の向こうで髪をかきあげながら そう呟いた。
「お父さんしか知らないしね」
小さい頃からあっちこっちよく遊びに連れて行って、欲しいものはすぐに買い与えていた夫。
お姑の言うように
「幸司が1度だって生活費を入れなかったことがある!?」
自分のお小遣いを差し引いた残りは全部、生活費に入れてくれた。
とくに口うるさく「勉強しなさい」などと言ったこともない。
それなのに、お父さんのことも決して『結婚向きじゃない』と言っているのと同じ。
なんとか笑って過ごしてきたのに、子供達はそれは(お母さんが我慢してただけ)とわかっていたのかも知れない。
「黒木さんとこがいいよ~黒木さんみたいな夫婦が理想♪」
黒木さんとは近所のご夫婦。
別にベタベタしているわけじゃない。夫婦共働きでお互いに思いやりをもちながら生活している。
ある日、奥さんの帰りが遅くて、晩御飯を待つご主人に作ってあげようと、冷蔵庫をあけたらキャベツしかなかったと言う。
仕方ないから
「ごめ~ん、キャベツしかない」
そう言ってキャベツの千切りにマヨネーズをかけてご飯と一緒に出したら
ご主人がそれを食べながら
「このキャベツの千切りは本当にうまいなあ」
と食べてくれたと言う。
その話を聞いて、なんて優しいご主人なんだろうと私は涙が出た。もうだいぶ前のことだけど・・・
そんなお互いに思いやりを持ちながら暮らす両親の姿を、子供は小さいなりにちゃんと見て育っているのだ。
私が「ごめ~んキャベツしかない」
と言ってキャベツの千切りを出したら、夫は間違いなく箸を叩きつけてキレるだろうなあ