あすみとモラハラ夫との卒婚生活

モラハラ夫  卒婚生活 カサンドラ

モラハラ母が画策した兄のお見合い


「中川みどりって知っとる?」

電話が鳴るので、受話器を取ると母はいきなり用件から喋りだす。
「元気かね?」でもない。
いつものことなので、私は親子はそんなものだと思っていたけど、傍で聞いてる夫からは
「何 それ・・・ふつう?」
とよく、呆れられた。



「中川・・・みどり・・ああ、知ってる知ってる」

結婚前に勤めていた金融会社にいた可愛い子だ。

ちょうど、退職する年に入ってきた子で、仕事もあまり接点はなかったが、いつもの会社の飲み会の時に、隣に座っていた上司が、ペタペタ背中や膝を触るのを
「止めてください!」
と、ピシャリと言ったことが、後々
「あいつは可愛げがない」と、レッテルが貼られていた。
雇用機会均等法などなく、
まだまだ会社での女性の位置が低かったとき。

女性社員は、いかに男性上司に気に入られるかで、仕事の内容が多くなったり、少くなったりした時代。
(もっとうまく立ち回らないと仕事が大変になるのに・・・)
と、内心思っていた子だ。
可愛い子なのに、毎日毎日楽しくなさそうな顔をして会社に来ていた。



ところが、結婚して半年くらい経ったとき、元同僚と電話で喋っていた時に
「あの娘、キャビンアテンダントに転職したんよ」

と聞いた。
朝、出社すると、その足で2階の支店長室へ入り
「転職するので退職させていただきます。」

と、辞表を叩きつけてそのまま帰って行ったと言う。

パワハラ セクハラが横行していた会社に我慢できなかったのだろう。
このときは、もう、支店長も課長も変わって良い雰囲気に変わっていたにも・・・だ。


「中川みどりさんがどうかしたの?」

「お兄ちゃんとお見合いせんかねって知り合いから話がきたんよ」

「えええ!」


母から電話をしてくることはほとんどない。

結婚した時も1年間、母から電話してきたことはただの1回もなかった。
家から出ていってせいせいした、という感じだろうか。

母から電話がかかってくる時は、この手の自慢話の時がほとんど。


「どんな娘かね?」

「可愛い子よ、きちんとしてるしね」

「ほほぅ」

そこまで、言って、母が本気で兄とお見合いをさせようとしているかと思うとゾッとした。


兄は大学を止めてからアルバイト先から正社員に変わって暫く働き、実家には寄り付かなかったのだが、私の結婚の時には前の晩、夜遅くに帰ってきた。

物事が整えられる時 - あすみとモラハラ夫との卒婚生活


その時の母の喜びようと言ったらなかった。


それを機にどうやら、実家に戻り、何かスキルを身につけさせないといけないと思ったのか、家から会計の専門学校に通っていたようだった。詳しいことは私には言わないし、私もあまり興味がなく、聞かなかった。


たぶんそこを卒業して、母の仕事の伝手を頼ってどこかの会社の経理かなんかで雇ってもらって1年くらいだったんだと思う。
母は、泥で縄を作るみたいに、なんとかそこまで、持っていって勢いで結婚まで持って行きたかったのだろう。

その相手が、普通の娘では、見栄っぱりの母を満足させる筈はない。
結婚相手が
『キャビンアテンダントなのよ』

と、言えば、格好がつく。
いかにも母が考えそうなことだ。

私ははっきりと電話で伝えた。

「あのねえ!わけのわからない会社で、まだ1年くらいで、一流企業でもないし、何の補償もない、一流大学出てるわけでもない。見た目が格好いいわけでもない、背が高いかって言ったら高くもない、じゃあ、財産家かって言ったら財産のある家じゃあない、中川さんに対してそれは、失礼っていうもんよ
『せっかくのお話しですけど』ってすぐに断りよ」

と、はっきりそう伝えた。

「・・・・そう・・やね」

「そうよ!!」

考えればわかりそうなものなのにと、母の常識を疑うばかりだった。

傍で電話を聞いていた夫が、
「ほんとにお兄ちゃんが可愛くて仕方ないんだろ」

と呆れていた。


兄の結婚相手のことを叔母から聞いて驚いたのは、それからずっとずっと後のことだった。