あすみとモラハラ夫との卒婚生活

モラハラ夫  卒婚生活 カサンドラ

結婚


爽やかな秋の日に私は高校生の時からの馴染みの基督教会で結婚式を挙げた。

日曜日とあって、まだ礼拝中だ。
私がウエディングドレス姿で玄関に入った時には、剛くんが、すでに礼服を着て出迎えてくれて
「あちらの控え室へどうぞ」
と案内してくれた。

教会は礼拝後、すぐに式が執り行われるように前日からみんなが会場を準備してくれていた。

長椅子には薔薇の花とかすみ草の小さなブーケを飾り、バザーの時に喫茶店に早変わりしていた2階の踊り場の窓には、セロハンでステンドグラス風に飾られていた。

長くお世話になった牧師さんが私達の司式をしてくださり、短大のときにお世話になった音楽の先生が、奏楽を担当してくれた。

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北川くんに会って自分の気持ちに向きあってから、やはり、「私は北川くんが好き」と再確認して帰ってきたあの日。

お見合い相手には伝えたが、
「正月休暇で帰っている間だけでも時間を作って付き合ってください」と、かなり強引だったが、仲に立っている人の顔もある。
あまり邪険にはできなかったので、あまり気はすすまなかったが、そんなに長い時間ではないだろう、と付き合うことにした。



お正月の初詣に「○○天満宮へ行きましょう」と言う。
(やれやれ)初詣で、神社仏閣に行くのは、いつ以来だろうか・・・
小学校低学年くらいまでは、祖母が泊まりにきた時には一緒に行ったかも知れないが、それ以後、修学旅行で行ったくらいだろうか。


国道は大渋滞した。
いつもはたぶん2時間くらいの道のりを4時間近くかかったような気がする。
本当に行って帰ってくるだけ。

駐車場に入るだけでも時間がかかり、降りたら降りたで、境内までの長い参道には、両脇に出店や屋台が並び、初詣の人やら、お店の客引きやらでごった返していた。

人の波にもまれながら、境内まで辿りつくと、今度はぶら下がった鈴を鳴らそうと、みんな取り合いになってさらに人が群がっていた。

「じゃあ、一緒に拝みに行きましょう」

そう彼は言ったが、
「私、ここで待ってますから、どうぞ1人で拝んで来てください」
と伝えると、一瞬(え?)と言う顔をしたが、言われるままに、人ゴミを掻き分け掻き分け入っていった。
鈴を奪いガランガランと鳴らすと、背を丸めて何か一生懸命拝んでいた。
拝み終わるとまた、人を掻き分け掻き分けこちらに戻ってきた。

真冬というのに、人の熱気で、ジャケットのポケットからハンカチを取り出して額の汗を拭いながらこう言った。

「やっぱり教会に行っていると、拝んではいけない決まりかなんかあるんですか?」

「決まりってわけじゃないけど、やっぱり神社の神に拝むのはちょっと抵抗がありますよね」

ちょっとおちゃらけてそう言うと

「じゃあ、この次からは一緒に教会に行きましょう」


行き交う人の集団、買い物する人の群れ何か叫んでるお店の人達。
私が見ていたそんな風景が波打つように一瞬にして静寂に変わった瞬間だった。

「ああ暑い暑い」とハンカチを離さない彼。

「バザーに呼んだら?私がみてあげるよ」と言っていたゆみ子。
あの夏が終わってから・・・ - あすみとモラハラ夫との13000日


あの時、研修地から寝台列車に乗って間に合うように教会に顔を出した。
入ったこともない教会で、きっとお尻がむず痒くなって退散するだろうと思っていたのに、ゆみ子と話しているうちに同じ学校区と言う共通の話題で盛り上がり、校歌まで、一緒に歌いだして、おおいに盛り上がったのだった。

後から「どうだった?」と感想を尋ねると
「大人よね 距離は北川くんよりずっと遠いのに、あすみのすぐ傍らにいる感じがしたけどね」と。



『みんな孤独と戦ってるんだ』と言った北川くんの言葉が思いだされた。


北川くんの言うように人は孤独な生き物なのかも知れない。が、こんな力のない私でも2人だったら何かできるんじゃないだろうか・・・。

先週会ったばかりの北川くん。私の心の全てを占めていたはずの北川くんのことが、もうずっと遠い昔の幼く、淡い恋心のように懐かしく思い出されるようだった。

大切なのは、孤独だからこそ、助けあって行くこと。理解しようと努力すること。
大海のようなお見合い相手の彼に比べて、自分はなんと心が狭いんだろうか・・・

目の前の梅の木のその小さな枝の先にも、小さな白い蕾が開きかけて・・・神様はこんなところにも広く深い愛情を注いでくださっているのだと、感無量になっていた。


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皆で讃美歌を歌い、教会の皆さんの拍手で送られ、会堂を後にするとき、2階から花びらと紙吹雪と共に「おめでとう!」の言葉で仲間達が送り出してくれた。



見上げるとそこには北川くんの姿もあった。
目が合うと 『うんうん』と頷いて微笑んでくれた。

 

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