父のことが心配で仕事は午前中で帰らせてもらい、お昼ご飯を持ってマンションにかけつけた。
エントランスを鍵で開けてそのまま父の部屋に行く。
以前は、エントランスでへや番号のベルを鳴らすと「はーい」と言って扉を開けてくれた父。
今はベッドから起きあがるのに時間がかかるので、持っている鍵で勝手に入っていく。
朝は食事をしたら飲むように頼んでおいた薬を飲んでいて安心した。
持って行ったのはわかめのお味噌汁と八宝菜。
昨日持って行った、豆苗の煮浸しが繊維があって食べづらそうで、今日は柔らかいものを意識したが、一時期に比べて食べる量がうんと減ってしまった。
カットされてパックに入ったパイナップルを持って行ったら「うまいなあ」と食べてくれた。
お昼を食べて、薬を飲むのを見届けてから「また夕方くるね」と言って帰った。
自宅のキッチンの方が使いやすくて、夕御飯を作りに自宅に帰ると、モラハラ犬たろが、ちぎれそうなくらいしっぽを振って出迎えてくれた。
散らばった落ち葉を綺麗に掃いてゴミの袋に入れておいたのに、お昼に轟いた雷に畏れたのか、またビリビリに破いて(>_<)まったく・・・本当に世話のやける犬だ。
今日のメニューはお昼に食べきれなかった八宝菜の残りに、焼きナスとほうれん草のお浸し。
「ありがとうよ」
「いいよ、これくらいのこと」
昨日、持って行ったパジャマのズボンが長いかなと思ったけど、ちょうどよかった。
食べている間にお風呂のお湯をためておこうと、お風呂場を覗いて、私は衝撃で扉を開けたまま立ちつくしてしまった。
綺麗好きな父は昔からお風呂からあがるとその手ですぐにお風呂を掃除する。
壁も棒のついたたわしでごしごしとこすり、いつも綺麗な状態だ。
生家のお風呂場がいつも綺麗で清潔だったらのは、父がいつも綺麗にしていたからだと夫と結婚してから知ることとなったが、今日、マンションのお風呂場を覗いた時の衝撃は、『夫の旅行鞄から出てきた衝撃』
に近いものがあった。
お風呂場がカビだらけで真っ黒になっていたからだ。
父にはあり得ない。
「どうしたの?あのお風呂場は?」
「なんかね?」
「カビだらけじゃん、ずっとあのおふろに入っとったの?」
「そうかなあ・・・」
綺麗好きで、風呂掃除を毎日の習慣にしていた父が、汚いままずっと入っていたなんて、すぐにその事実を飲みこむことが出来なかった。
「買い物してくるわ」
と、カビとり洗剤や、ゴム手袋、ブラシなど買ってきて、お風呂の掃除を始めた。
考えられなかった。
カビはすぐにとれだが、腰が痛かったのはもう、少し前からじゃなかったのかなとも思ったし、認知が入ってきたんじゃないかと思ってゾッとした。
5年前に連れてきた時には、近くの山に登って降りてきたと笑いながら話していたし、年月は過ぎているが、父はいつまでも元気でいるとばかり思っていたのに・・・。
お風呂場の汚さは異常だった。
この地域も豪雨災害で水が止まった時に、10日あまり、お風呂に入れない日が続いたが、いち早くお水が出るようになった、父のマンションにお風呂に入りに来たことがあったが、自宅のお風呂に比べてもピカピカで、気持ちが良かった。
そんなイメージで開いたお風呂場の扉。
衝撃は計り知れない。
汚いのを汚いと認知出来なかったのか、それとも、腰痛で掃除をしなかなっただけなのか・・・。
いずれにしてもコロナになってから確実に老化が進んでいる。
明日も訪ねるが、毎日のちょっとした変化を見逃さないようにしたいと思う。