今日は、足が浮腫んでいた父の血液検査のために、病院に行った。
ただ、連れて行くだけだったのに、なんか、半年分の疲れに匹敵して、アパートに帰ってからしばらく放心状態になってしまった。
何でこんなに疲れたんだろう。
まずは、病院が午前中だけの今日、仕事を早退して、すぐに父に、電話を入れたが···
200回鳴らしても、電話に出ない。
時間がないから、楽天モバイルからアプリを使ってスピーカー状態にしてずっと鳴らしたが、何でこんなに電話に出ないんだろうかと。
楽天モバイルの回線が悪いの?
運転する車の中でも、助手席にスマホを置いて、ずっと鳴らして車を走らせた。
切っては繰り返し、切っては繰り返し、鳴らしたこと200回近く。
「はいはいはい」
やっと出てくれた。
どうやら、スマホを洗面所に置きっぱなしにして気がつかなかったらしい。
それにしても200回近く鳴らしたのに···。
どっと疲れた。
「いい?今から病院行くから、時間がないから着替といてね!」
運転しながら、大声でそう返答した。
「はいはいはい」
病院は12時までなのに、もう、11時35分を回っていた。
父の住むマンションの駐車場に車を止めて部屋に向かった。
いつもは鍵がしまっているが、今日はたまたま開いている。
良かった。
「こんにちは〜」と靴を踏みつけながら脱いで、入っていくと、何と、父はまだ、パジャマ姿でしかも、お昼ご飯に、今、ゆがいたお素麺をつゆにつけながらすすっている。
「何しとるん?、着替えてって言ったよね?、時間がないから早くして!」
病院の先生には、昨日の夕方、今日行くからと電話を入れておいた。
足のむくみは内臓からくる疾患かも知れないからと、血液検査の予定だった。
「どこいくんかね?」
「病院!昨日、先生に電話しといたんだから!今日、お昼までだし、時間がないんよ!」
「今日じゃないといかんのかね」
自分が決めた時間通りに物事をすすめたい父は、茹で上がったお素麺に後ろ髪ひかれるようだったが、時間は迫っている。
シャツと背広とズボンをとって着替を待ったが、尚、ブツブツと
「今日じゃないといけんのかね」
と、気がすすまない様子だった。
ズボンを履く前にズボン下の下着を探しはじめたが、洗濯してベランダに干してあり、探しても見つからないことに、父もだんだん苛立った様子だった。
「しょうがない」
ズボン下を履かずにそのままズボンに足を通しながら、何故か「ナンマイダーナンマイダー」と念仏を唱えてるのだった。
(全く意味がわからない!)(病院に行くと昨日も、さっきも、電話で伝えたではないかっ!)
着替が終わると今度は何かを探しはじめた。
私はもう、玄関で待機している。
「今度は何?」
「いや、電話がどこにあるかと思ってな」
「電話は私が持ってくよってさっき、言ったよ!」
探した下着や電話がなかったことで、いらいらはたぶん頂点に達したのだろう。
ブツブツ言いながら早足で歩きはじめた。
その後ろ姿からは、夏に圧迫骨折をしたとはとても思えなかった。
病院に向かう車の中でも不機嫌マックスな父。
滑りこみで、病院にかけつけると、いつものように親切な看護師さんや事務員さんが、丁寧に話かけて対応してくれた。
尿検査、血液検査、血圧を図ると、いつも低血圧の父の血圧が170にまで跳ね上がっていて、かかりつけの先生がびっくりしていたが、小声で、怒っていらだっていたことを伝えたら、先生も苦笑していた。
病院では最後の患者で、診察を終えて12時を過ぎた病院の待合室はニュースを読むテレビのアナウンスだけが、響いた。
とりあえず良かった。
血液検査の結果は来週わかるらしい。
内臓疾患でなければいいが。
スムーズに立ち上がったり、座ったりする父を見て、
「ずいぶん良さそうですね」
と、感心して微笑んだ。
ほんとにそう、圧迫骨折でここに初めてかかったときには、これからどうなるのだろうかと、不安で打ちひしがれていた。
ブツブツ憎まれ口たたきながらも、今、こうして、自分で自分の昼ご飯を作り、さっさと歩き、またデイサービスも楽しみに行くようになって、快方に向っていて本当に良かったのだ。
寒くなるので、温かい下着をまた、持って行ってあげよう。