私が夫のモラハラに堪えていけるのは、モラハラ母に育てられたからと、母との確執を思い出しながら書いています。
高校生になってから・・・いや、きっと私が教会を覗くようになってからだ。
今まで、私の洋服と言えば、1年に1度、祖母からもらったお金で買うくらいで、あとは他人様のお下がりばかりだったのに、どうしたことか、私の洋服をせっせと買うようになったし、作ってくれた。
前の年に祖母が亡くなり、私のことを気にかけてくれて、亡くなる前に母に、私のことをもっと大事にするように遺言でもしてくれたかと思ったが、そればかりでもなさそうだった。
基督教会の礼拝に出席するようになってから、何回目かに、白髪の上品な年配のおばさまが近寄ってきて、
「ねえねえ、佐藤あすみちゃんってもしかしたら、あの、四季が丘公園のそばに住んでる佐藤さん?」
「あ、はい、そうです」
「まあ!やっぱり!いやあ、似てると思ってたのよね、おばちゃんね、あすみちゃんのこ~んなちさい時から知ってるのよ、まあ、こんなに大きくなっちゃって!」
よくわからないが、手振り身ぶりでとても懐かしそうににこやかに笑ってしゃべるので、話が終わるまで、笑ってようと思った。
「ちょっと!あなた!やっぱりそうよ、あすみちゃんって、佐藤さんとこのあすみちゃんだって」
男の人ばかりが話していた輪の中から、白髪の上品なおばさまは、ちょっと来てと、手を振って合図をしながら、やはり白髪のおじさんをよんだ。
「ほう、やっぱりそうでしたか・・・」
「まあ、おかあさまお元気?」
「はい!」
「まだ、洋裁はやってみえるの?」
「あ、はい」
訳はわからなかったが、一応、ニコニコ笑っておいた。
「おばちゃんね、おかあさまには、よくお洋服作ってもらったのよ、長く着てるけど、なんともならないの」
賑やかな雰囲気に他のおば様達も近寄ってきた。
「どうしたの?田村さん」
「いやあ、この方ね、私、小さい時によく知ってるの、おかあさまもおとうさまも、とてもいい方で、ご近所だったのよ」
(近所に住んでたんだ)わからなかったが、盛り上がっていたので、ニコニコしていた。
「おかあさまね、洋裁をなさるの、ほら、この間着てきたスーツあるでしょ?」
「ああ、あの素敵な・・・」
「そうそ、あれ、この方のおかあさまが作って下さったのよ」
「あらまあ」
「別嬪さんでねえ」
「まあ!やっぱりそうだったのね!懐かしいわ!
あなた、続けて教会いらしてね」
よくわからなかったが、2人がとても懐かしそうににこやかに話しかけてくれたことを、教会から帰って、さっそく母に伝えた。
「誰って言った?」
「田村さんてば」
懐かしそうに喋る2人の話の内容を話したのに、本気で聞いてなかったみたいで、話の内容を聞き返してきた。
「田村さんて人よ」
今 思うと、その時 母はほんの僅か 何かを考えたような気がしないでもなかった。
田村さんは市の本局の郵便局長さんを長く勤めた後、退職して、奥さんや子供さん、お孫さんとも一緒に暮らしているそうだ。
父母が家を建てる前に、どうやら田村さんご夫妻の近くに住んでいたらしく、とてもお世話になったらしい。
洋裁を生業にしていることを知っているのに、その子供が、あんまりみすぼらしい姿で教会に現れるのは、昔のことを知っている手前、見栄っぱりの母は大いに気がひけたはず。
そんなやりとりがあってからか、私が教会に行く時には、私の洋服に気を遣うようになった気がした。