モラハラ夫、今日からお姑の様子を見に帰省。
大学生の息子と自宅でお留守番。
晩御飯の買い物途中にラインがあった。
「タロのリードが変なんだけど」
タロとは柴犬そっくりのうちの雑種犬。
私は絶対にいやだと言ったのに、「僕が絶対に面倒みるから」と、生まれて間もない時に、愛護団体から連れてきた。
可愛いんだけど、甘やかして躾ができてない。
「面倒見るから飼いたい」
と言ったのに、
「仕事で疲れている」
と言って、夫は散歩は土日しか連れて行かなかった。
可哀想にタロはストレスを溜めていたんだと思う。
タロが可哀想と思ったから、仕事から帰ると、買い物したものをそのまま玄関先に置いて、私が散歩に連れて行った。
でも、私も立ち仕事。疲れ果てて散歩に連れて行く元気がないときには、夫に
「タロを散歩に連れて行ってあげて、飼いたいって言ったのはあなたでしょ」
こんなこと言いたくはなかったが、私も仕事が終わって買い物、食事作り、洗い物、と家事が山積みで、ソファでスマホをつつくだけの夫に、犬の散歩くらいして欲しかった。
「なんだよっ!休みに行ってるじゃないかっ!」
「みんな毎日行ってるじゃない、タロもストレスが溜まってるのよ」
タロはよく吠えた。
顔馴染みの宅配便の人にも、近所のママ友にも容赦なく吠えまくった。
繋がれっぱなしでストレスが溜まっている様子だった。
「気になるんだったらあんたが行けばいいじゃないか、俺の仕事はあんたみたいな鍵を開けるだけの楽な仕事じゃあないんだよっ!」
本当に腹が立つ言い方。
そんな日々が続いた時、とうとう事件が起こった。
モラハラ犬タロが自分のリードを噛み切って逃走したのだ。
団地中を駆け巡っていたらしい。
子供のスマホにも
「お前んちの犬じゃね?」
とラインが来たと後から聞いた。
仕事から帰ると、タロの噛みちぎられたリードが変な風にくくられて、玄関先に繋いであった。
それを見た時、とても嫌な予感がした。
(他人に危害を加えてなければいいけど・・・)
繋いでくれた人が誰かもわからなかった。
その夜、ピンポーンとチャイムがなった。
扉を開けると見知らぬ若い女性が立っており
「母がお宅の犬に噛まれたんです」と。
すぐにお宅に伺うと、母親らしき女性が右手を包帯でぐるぐる巻にした姿で立っていた。
思わず「ひゃっ!」と両手で口を塞いでしまった。
翌日病院の手配をしたり、病院に行くまでの交通費やもちろん慰謝料もお渡ししておおごとになった。
散歩に連れて行かないことで、タロかストレスを溜め他人様を噛んだのは飼い主の責任。
それからリードは鎖にして噛み切られないようにして、身体にムチうってなるべく散歩に連れて行った。
モラハラ犬タロは家族も噛んだ。
夫と私以外はみんな噛まれている。
娘などは顔を噛まれて痕が残っている。
そんな獰猛な犬を繋いでおくのは鎖以外ないはずなのに、今日、息子からラインで知らせがきたのは
「タロが普通のリードなんだけど」
という知らせだった。
「はあっ?!」
モラハラ夫は面倒くさかったのか、私に丸投げしようとしたのか、鎖で繋いでなかったのだった。
すぐに帰省した夫に連絡して、どうして鎖で繋いでないのか聞いてみた。
「大丈夫だよ、もう老犬だし」
「また、噛み切って逃走したらどうするのっ」
「大丈夫だよ」
モラハラ夫のこの感覚が私はよくわからなかった。
家族だけでなく他人様まで噛み付いて大変な事になったのに
「大丈夫だよ」
とはどういう神経なんだろう。
何か起こったら、周りの誰かが責任を取ることが当たり前になっているか、ひょっとして何か起こって大騒ぎになるのを、この人は楽しんでるんじゃないだろうかと、子供みたいな無責任さに呆れて怖くなった。