母はとても器用なひとだった。
頼まれた洋服を仕立てる合間に、ちょこちょこっと自分のワンピースやらを縫って、余り布で私のものも作ってくれた。
「いいね~あすみちゃんのお母さんは洋服が作れて」
友達や、友達のお母さんもそう言って褒めてくれて、私は、どこのお母さんも当たり前に洋服を作れると思っていたので、そう言われる度に、当たり前のことじゃあないんだ とわかった。
叔父の結婚が決まった時に、相手の家にごあいさつにいく時の祖母のスーツを母が作っていた。
歳にしてみれば、60才前くらいだったと思うけど、今、考えてみたら、何であんなに、地味な洋服を着てたんだろうか そう思うくらい地味な灰色がかった紫色のレースのスーツ
後に祖母の写真を見て母も同じことを言っていた。
私に作ってくれたのは、その余り布で作ったワンピース
小学校2年生くらいだったと思う。
ただ後ろにチャックをつけただけの簡単なワンピースで、もちろん7才くらいの子供が着るにはものすごく、地味な色だったかもしれないが、私は祖母とのお揃いというだけで、そのワンピースをとても気に入っていた。
そればかり着ていたのは、たぶんコットン×シルクの品質がとても良くて肌触りが良かったからかもしれない。
「これで、余ったらあすみのワンピース作ってあげようか?」
そう言って広げて見せてくれたのは、黒と白の小さなチェック柄になんか、楕円形みたいな茶色の大きな丸がところどころに配されている布
「なにい?その変な柄~?何の絵?」
「これ、りんごよ~」
そう言われて近寄って見ると、
「ほんと!りんごじゃ、可愛いね!」
楕円形みたいな茶色い丸は、近くで見たらりんごの柄で、そのままのりんごと、サクッと縦割りにした時の、種がついた断面のりんごとが交互に並んで、とても可愛いかった。りんごが赤色じゃないところが良かった。
「作って作って!」
夏休みに入る前には、母のワンピースと私のワンピースができあがり、兄も一緒に3人で、坂を下ったところの、ラジオ体操をする町内の広場に行ったら、
「お母さんとお揃いやね!」
と、みんなから注目を浴びた。
続く