できたばかりのリゾートホテルは、室内プールや劇場、結婚式場もあり、その頃、よくテレビでも宣伝されていたホテル。
(わあ~こんなところ行ってみたいなあ~)
と、テレビに釘付けになりました。
真理ちゃんや恭子ちゃんやアッコちゃん、中学にあがるとなかなか集まれないだろうと、進学する前に、このできたばかりのリゾートホテルにお泊まりしようということになったのです。
真理ちゃん達はひとつ年上、兄と同じ学年です。小さい頃は兄もよく一緒に遊びましたが、さすがに高学年ともなると、
「僕はいいわ」
と兄は遠慮しました。が、私は行く気まんまんです。
そもそも、ひとつ歳は上でもいつも一緒に遊んでいた仲のいいお友達です。アッコちゃんのところも、歳が下の姉妹の智美ちゃんやよっちゃんも行くのです。
みんなでお泊まりなんて想像しただけで、ワクワクします。本当に楽しそうです。
「私も行く行く~」
今までも家族で旅行なんて、お盆やお彼岸で、両親の田舎にお墓参りにいくぐらいしか行ったことがありません。
一晩泊まって、従兄弟たちと遊ぶだけでも楽しかったですが、お友達と旅行なんて行ったことありません。
「ねえねえ、みんな行くんでしょ、私も行く~」
「連れてって~」
何も返事がないまま、計画自体がなくなったのかなあと思っていたら、
「今回は2人ともお留守番ね」
母に何度もお願いしたけど、連れてってはくれませんでしたし、母も行かないと思っていたのに、母だけはちゃっかりリゾートホテルに行ったのです。
本当にがっかりしました。
「ホテルはどんなだった?」
と聞いても、
「なんてことはなかったよ」
と答えるだけ。本当はママ友達と飲んだり食べたり、お洒落して楽しいことばかりだったはず。
それを悟られまいとしたのでしょう。
「何で弘くんやあすみちゃんは来ないの?」
と聞かれたそうです。
聞くでしょうね、みんな子供連れなのに、自分のところだけ、お母さんだけなんて。
「用事があったのよ」
何の用事?って思いますよね。
こんなふうに、実家では、
「勉強しなさい!」
「お手伝いをしなさい!」
「口ごたえをしない!」
と子供に対する要求はたくさんでしたが、子供が楽しいことは、ことごとく却下されて、我慢を強いられたり、辛抱したりの繰り返しで、長く繰り返されるうちに、親に反抗することができない、親に期待をしないような子供になって行ったのです。
でも、子供だから楽しくなくても、嫌でも家を出ていくわけにはいきません。
生活そのものを親に委ねられているのですから、学校にとりあえず行くためには、親のご機嫌を損ねるわけにはいきません。
私が嫌なことがあっても、『おかしいな』『理不尽だな』と思っても、辛抱し、我慢し続ける気質になってしまったのは、こんなモラハラな母に育てられたからだと思います。