年で言えば80は過ぎていると思える老夫婦。
2人で買い物に来ていたが、なんの拍子か、おじいさんの方が、尻もちをついてしまい、なかなか立てずにいた。
その場にいた人達で抱えあげようとしたけど、なかなか持ち上げられない。
傍らにお婆さんの方がいたが、ぶつぶつぶつぶつ何か言っていた。
顔に皺が深く刻まれている。細くてちっちゃい顔がマスクのせいで余計に小さく見えた。
ギョロリとした大きな目が老眼鏡の中から
こぼれ落ちそうだ。
みんなで抱えてそばにあった椅子にやっと座らせたが、「大丈夫ですか?」と声をかけると「すんませんなあ」を繰り返した。
「2人でいらしたの?」
そう、聞いてみた。
老夫婦2人だけで来るには、足取りもおぼつかなく、話すことも、あまり聞き取れてない様子で、誰か、子供でもついてきているのかと思った。
が、老夫婦は車を運転してきたというから驚いた。
「ええっ?車で来たんですか?」
「もう、止めたらとせがれに言われるがなあ、足がなかったら動きがとれん」
田舎暮らしでは、何をするにも車は不可欠。
子供さんもいるにはいるようだが、
「あれも、仕事しよるからな、なんもかんも頼めん」
と、老夫婦2人でつましく暮らしている様子がうかがえた。
老夫婦だけでは、すぐに済みそうな用事でも、なかなか段取りよく運ばなかったり、重いものなども運べそうにない。
夫婦で子育てもしてきただろうに、頼りになる子供が遠方にいたり、いたとしても子供に遠慮して頼まなかったり。
おじいさんはずっと「すんませんなあ」を繰り返して、思わず涙が出そうになった。
戦後の混乱を乗り越えて生きてきただろう老夫婦が、こんなに便利な世の中になっているにもかかわらず、方法や術を知らずにただただ、肩を寄せ合って生活していることに、「もっと頼ってください」と声をあげずにはいられなかった。
社会生活はどんどん進化していくのに、コネクトがない老人はただ置いてきぼりになるだけ。
自動で支払うことができるレジや、二次元コードで読み取るキャッシュレスサービスなども、老人はそれをサービスと捉えているだろうか?
地域から老人が孤立しないためにできることは何だろう。
便利な世の中にはなったが、高齢者もそれを便利と思わなければ、ただ孤立していく老人が増えるだけだと感じた。
私達もやがて老いていく。
お金も健康も大事、そして声を掛け合う人のつながりが何より大事と感じた。